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科学と理論で実現
高糖度の桃で
世界を目指す
古山浩司氏の桃
科学と理論で実現する、高糖度の桃で世界を目指す
福島県福島市で古山果樹園を営む古山浩司氏は、この地で明治より100年以上も続く農家の5代目で、震災を機に就農する前はエンジニアをしていた。従来の勘と経験に頼った方法ではなく、科学的に立証された技術と理論的に積み上げた知識をもとに、改良を積み重ね、それが現実に実を結んでいる。 そんな彼の育てる果実を求め、古山果樹園を訪れた夏の暑い日、渡されて口にしたのが「凍る寸前まで冷やした完熟桃」だった。通常、人間の舌は冷たいものは甘みを感じにくいはずだが、噛り付いた瞬間に果汁がじゅわっと溢れ、強烈な甘みが広がった。
まだ畑に到着して1分しか経っていない。古山氏なりの歓迎の仕方だが、一瞬で心を掴まれてしまった。高性能の光センサーを持ち、収穫した桃はその場で糖度を計測することができる。桃は糖度12〜13度あれば特秀品として出荷される産地が多いが、なんと、糖度30度を超える超高糖度の桃を作り出したことがある。案内された畑で話を聞いていると、「これは糖度18度、こっちはあと3日で20度、それは25度いくね」と、信じられないような高糖度の桃がそこら中に実っている。桃を見ればだいたい糖度がわかるというから驚きだ。めずらしい品種の桃の栽培にも積極的に取り組み、海外に福島の桃を広めることも視野に入れている。世界を見据える男はスケールが違う。
超高糖度桃は
こうして作られる
桃の作り方に絶対は無い。それは地域によって、土壌も違えば天候も違うからだ。古山氏の土作りで特徴的なのは「ウニの貝殻」を使うこと。山の土壌に含まれるミネラルは雨によって川に流れ、海まで運ばれる。その栄養分で育った海藻やプランクトンを食べたウニを、今度は畑に戻すことで栄養が循環する。堆肥はステビア入り牛糞を中心に自然のものを組み合わせ、追肥はしない。
「現代の日本の土壌は栄養豊富すぎる。人に例えるとメタボのようなもの。人も土壌も健康じゃないと、いい子孫(実)は残せない。」というのが古山氏の基本的な考え方だ。
桃は太陽の光を浴びることで赤く色づく。所狭しと植えられた桃の木の葉同士が重なり、光が遮られるため、葉っぱをちぎり、木の根元まで日差しが差し込むようにするのが普通だ。ところが、古山氏の畑は違う。木と木の間隔が広く、光が差し込み、葉が青々と生い茂っている。
「葉が多くないと光合成しないから美味しい桃はできないよ。」桃の生産が盛んな地だけあって、周りにも桃の木はたくさん生えているが、古山氏の畑だけは生育具合がまったく違う。2018年7月に取材した時は福島は雨が降らず、小玉傾向で糖度が高い当たり年と言われていたが、この畑には小玉の桃は見当たない。「水分管理をしっかりとすれば、ちゃんと大きく育つ。極限まで水分を絞るのではなく畑が沼になるくらい水を与えてるよ。」同じ土地で育てているとは思えぬほど、古山氏の畑で育つ桃は見事だった。
ギリギリまで樹上で糖度を上げ、自分で収穫する
桃の収穫は家族のみで行うことを徹底している。品種や天候によって収穫のタイミングは変わり、味に大きな影響を与えるので誰にも手伝わせない。甘い桃というと真っ赤に色づいたものを想像されるだろうが、古山氏は「霜降り状でトロのような状態がおいしい。ほんとは白い桃だけを作りたいんだ。真っ白な桃は究極に近い。」という。霜降り具合、色、形が究極なものは糖度25度を越えてくる。
見た目は決して良くないが、白っぽい桃が入っていたら美味しい証。かなりラッキーだ。
1玉1玉をセンサーにかけて選別する
古山果樹園には個人の生産者では珍しく、近赤外分光分析センサーが置かれている。「食べて甘い」だけでなく、実際に1玉1玉測定し糖度や味のブレが無いように手元で検査するのだ。この緻密さはエンジニア時代に培ったものだろう。糖度20度以上の桃には、糖度を計測した証拠写真もつけて送っている。安心してもらうのも味のうちだと彼は言う。
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