植田製茶
静岡・牧ノ原台地
日本一の茶どころ
日本三大銘茶の一つ「静岡茶」は、静岡県の中西部に位置する牧ノ原台地でそのほとんどが作られます。島田市・牧之原市・菊川市・掛川市にまたがる台地でおよそ5,000ヘクタール以上の広大な台地です。長い日照時間と温暖な気候で、お茶作りには最適な土地です。牧ノ原台地には、1000余に及ぶ茶農家が軒を並べています。
なかでも「植田製茶」は創業130年余、「静電気方式選別機」を導入して、今日までこだわりの『棒茶』を作り続ける茶問屋です。
日本最大茶産地「牧ノ原台地」の特徴と美味さの秘密
日本で生産される緑茶の半分以上が静岡県で作られています。
牧ノ原台地は、もともと米作には適さない不毛な土地でした。しかし、明治維新の後、徳川幕臣や大井川の川越人足たちによって開拓が行われ、水はけが良い赤土に茶樹を植えたことから、茶の生産が始まりました。
その後、温暖な気候と適度な降雨量によって、緑茶栽培の一大産地にとして、その名を馳せ、経験と実績が評価されてきました。美味いお茶を作るノウハウが今も受け継がれています。現在では、静岡県産のお茶の半分以上が牧ノ原で作られるようになりました。
標高40〜200mの台地は、北から南へ緩い傾斜を帯びており、霜が降りることも少ないため、今やわが国最大の上級茶産地として知られています。
牧ノ原台地で主に栽培されている品種が「やぶきた」です。今や日本の緑茶の7割近くが「やぶきた」ですが、もとは牧ノ原台地が発祥です。「やぶきた」とは、明治から昭和にかけて、静岡市で杉山彦三郎が選抜した品種で、“竹やぶの北側に植えた”ことから「やぶきた」と呼ばれるようになったそうです。
「やぶきた」のなかでも、『一番茶』と言われる茶樹が育つのは、節分(2月3日)のころから3月くらいです。この期間、牧ノ原の台地は、ぐっと寒暖の差が激しくなり、茶樹の根が一気に成長する時期を迎えます。しっかり育った茶樹が4月になり、若葉が出てきて、下旬になるといよいよ茶摘みの時期を迎えます。
『一番茶』の収穫は、4月下旬から5月10日ごろまで。近年、お茶の品種改良が進んで収穫時期も早まっていますが、日本茶の代名詞である「やぶきた」の『一番茶』は、芽が柔らかく、茶葉は大きく、肉厚でコクと旨味が十分に引き出され、古くから人々に無病息災や長寿の祈願として飲まれてきました。
「昔は一家総出で一番茶の摘み取りに追われましたが、今では、最初の2〜3日だけ手摘みをして、後は機械でいっきに摘み取ります。何と言っても、若葉の成長が早いので、時間との戦いです。」
と、3代目植田製茶の 植田 初さん は言います。
手摘みで採ることができる茶葉は1日で平均30kgくらい、機械だと1日に1,000kgくらいだそうです。今では茶農家の後継者不足や摘み取る人手の不足も重なって、機械で摘み取ることは日常的になってきました。
「手摘みで『一番茶』を摘み取るということは、お客様に美味しいお茶を飲んでほしい、という想いがあります。そして、我々、茶農家が茶作りに対して、感謝する、敬意の表れでもあるんです。丹精込めて作ったお茶ですからね・・・」と、植田さんは話します。
明治10年創業「植田製茶」の製茶法
牧ノ原台地の東部に位置する「植田製茶」は、約20,000平方メートルの茶畑を保有しています。直営農園だけでなく、自家製茶設備を持ち、栽培・加工・販売と一環して対応しています。4月下旬、初摘みの時期は、植田さんの茶畑でも、8人の老若男女が『一番茶』を摘み取っています。
「初摘みは、茶農家にとって1年で重要な行事です。昔は泊り込みで手伝い人に来てもらい、朝から晩まで茶摘みをしていました。 今では、一部機械になりましたが、その慌しさは変わりません。最近、お茶の需要は減少傾向にありますが、日本人にとってお茶は文化の一つだから、これからも沢山の人にお茶を飲んでほしいです」
と、植田さんは言います。
植田製茶の特徴は、煎茶などを選別するときに出てくる茎の部分を集めた「棒茶」にもあります。
現在、多くの業者が「色選別方式」を採用して棒茶を製造していますが、植田製茶は、昔ながらの『静電気方式選別機』にこだわった選別をしています。
『静電気方式』にすると、茎だけでなく、柔らかい芽(芯)が入り混じってしまいます。
「色選別方式」にすると、茎のみが選別されたお茶になりますが、『静電気方式』にしたお茶は、少しだけ柔らかい芽(芯)が入るため、飛び切り色が出て、深い味が出ます。“安価で手頃な棒茶”というイメージですが、植田製茶の「棒茶」は“お得で安価な美味しい棒茶”と言える所以です。
「最近は、日本茶のペットボトルの売れ行きは良いですが、急須でお茶を飲む習慣が薄れてきていますね。急須でお茶を飲んでほしいですね。茶葉からお茶の味わいを楽しんでほしいです。」
と、最近の日本茶離れを懸念する植田さん。
「私たちは、良いお茶を作ることが仕事です。お茶作りは大変重労働ですが、牧ノ原台地の温暖な気候のお陰で質の良い茶葉が育てられます。しかし、一番気を揉むのは、昔も今も天気だね・・・。」
植田さんは、空を見上げながら話します。
美味しいお茶の豆知識
お茶の保存方法は?
お茶は、湿気や直射日光に弱いです。密封して、冷暗所で保存して下さい。 また、臭い・香りが強いものを近くに置くと、臭いを吸い取ってしまいます。 (脱臭効果があります)ので、お気を付け下さい。
新茶の美味しい煎れ方とは?
新茶は、柔らかな若葉の爽快感を味わって下さい。香りとほど良い苦味を味わいたい場合は、 やや熱めのお湯で抽出して、旨味の多い味わいを楽しみたい場合は、70度くらいまで冷ましたお湯で抽出して下さい。
(1) 1人あたり、ティー・スプーン2杯くらいを急須に入れます。
濃い目がお好みの方は、少し多めで入れて下さい。
(2) お湯はポットでもやかんでも構いませんが、カルキ臭を取り除き、
しばらく沸騰させたお湯を使って下さい。
(3) 湯のみにお湯を注ぎ、湯のみを温め、湯をやや冷まして下さい。
(4) 湯のみに入れたお湯を注ぎ移し、30〜40秒ほど蒸らします。
(5) 茶葉が開き始めたら、湯のみに一滴残らず注いで下さい。
複数でお飲みになる場合は、少量ずつ、分け入れて下さい。
(株式会社 食文化 代表取締役社長 萩原章史)
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