創業明治四年 古串屋
激動の歴史に 研鑽された本物の味
毛利のお抱え宿として栄え、後に維新の志士や明治の偉人が集った古串屋。 高杉晋作らの「功山寺の挙兵」の地に程近い、壇具川に面した地。 長府藩侍屋敷長屋を川向こうに見る、まさに維新回天の舞台の一部と言えます。
料亭としての創業は明治四年 現在は六代目主人 神在邦幸が腕をふるいます。
古串屋の先祖は、毛利によって滅ぼされた尼子の重臣 神西三郎左衛門。
尼子の滅亡後、神西一族は散り散りに各地に移り住み、再興を期しました。
古串屋という屋号。その由来は現当主・神在邦幸の先祖が、岡山県小串村に住んでいたことに遡ります。神西から神在に改名し、町人となり、長府に小串屋の名で商いを始め、昭和初期に現在の古串屋に改名しました。
古来、日本では、 河豚(ふぐ)ではなく、 『ふく』と呼ばれていました。
『布久』『鰒』と書き、海水を吹いて餌を探すからとか、怒って腹を脹らませるからなど、諸説があります。 江戸時代中頃から関東でふぐと呼び、当て字に中国の河川で獲れる魚(河豚)を当てたのが、現在のフグの語源のようです。 今でも下関などでは『不遇に通じる』からフグとは呼ばず、『ふく』と呼びます。
究極の天然とらふくを堪能する
日本中の『ふく』のおよそ9割が集まる、 南風泊(はえどまり)漁港の競り
日本で獲れるフグ類は20種類弱。その殆どは下関の南風泊市場に集結します。 活の『天然とらふく』を頂点に、様々なフグな競りに掛かります。その手法は袋競り。 もし、同じ値段を指差した場合は、値入した仲買人がじゃんけんで決着します。
袋競りに参加する人間は『フグの目利き人』のみ。つまり、この市場が日本のフグの目利きをし、ランク分けをし、相場を決めることになります。
フグは見た目では品質がわかりにくいので、なおさら。この市場が日本のフグ流通に果たす役割は重要です。
また、猛毒のフグから毒のある部位などを取り去り、食べられる状態の 『みがき』 にする、専門の卸業者が集結していることも、この市場の存在意義です。
南風泊市場には日本中からフグが集まり、そして、日本各地に散じていくのです。
天然とらふく 身質を見極め、 最高の状態に仕上げ、ふく刺しを引く
古串屋ではふく料理を9月中旬から5月はじめまで供していますが、その時々で最高の産地のふくを使用します。大きさや気温などの諸条件を鑑み、身を熟成させる時間を調整し、最高の状態でふく刺を引きます。
下の写真の刺し盛り(皿の直径は40センチ)で、切れ数は150〜160切れぐらいになりますが、熟練の技で、使用するふくの身は必ず同じくらいの目方になります。
全ての神経を指先に集中
みがきから刺身にする部分を切り分け、さらに、身を適当な厚さにさく取りし、さらしで形を整え、ふぐ引き包丁で一枚一枚を引いて、皿に並べていきます。
『エッジが立つ』 まさに、そんな言葉で表現したいほど、力強い天然とらふくの身は極薄になっても、一枚一枚が主張します。
たっぷりと皮を添えて完成。黒皮、白皮、黒皮とおとうみ、白皮とおとうみ、皮も丁寧な仕事がされています。
橙を五千個しぼり、出汁と醤油を加え、 一年寝かす 絶品のポン酢
毎年11月末から12月はじめ、古串屋の厨房は橙(だいだい)の香りに包まれます。
五代目が考案した手製の器具を使い、ひたすらに橙を絞り続けます。
自家製のポン酢と最高の天然とらふく この絶妙な取り合わせに、ふく専門の安岡葱などの脇役が加わり、古串屋のふく料理は完成します。
定番のちりも雑炊も美味。意外に酒席にも合うのが『ふく雑煮』 京都の白味噌と地元の白味噌をブレンドし、絶妙なバランスです。もちろん、ひれ酒は絶品です。
下関の南風泊のフグ競りに行ってきました。
独特の袋競り(昔は羽織の袖の中で競り価格を決めていた名残)で、次から次へ競りが進んでいきます。
競りを見れば、天然と養殖の差は一目瞭然!
養殖は言ってみれば『ひと山いくら』ですが、天然はひと箱ひと箱 それもオスが何匹入っているかで違いますから、参加する人々は真剣な眼差し!殺気を感じる競りです。
今や天然ものは全トラフグ入荷量の1割。 さらに、良いものは数が限られています。
『天然も養殖も変わんないでしょ?』と思うのは勝手ですが、食べ比べれば、その差は明らかです。
味の濃さが違います。うまみはもちろんですが、味の奥行が違います。
もちろん、養殖だけを食べたら、それはそれで美味しいです。天然のトラフグを提供している店はいわゆる名店だけ。数が少ない上に、価格も高く、一般の店では扱うことは難しいです。
せっかく食べるのであれば、天然ものをお薦めします。
2月〜3月の白子は言うまでもなく、絶品です。
(株式会社 食文化 代表取締役社長 萩原章史)
(写真上)大皿に盛られた『ふく刺し』。 素材・技術・ポン酢・薬味 全てに妥協はない
(写真中)天然白子の焼きもの。 裏ごしした?っと錯覚するほどのきめ細やさは 流石!
(写真下)天日干し天然とらふくのヒレをオーブンで2時間焼き、 熱々の燗を注いだひれ酒は圧巻の美味
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