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樹上で完熟!“旨み”を徹底追求!
通常より約一ケ月長く完熟させた
岸田果樹園の早生みかん
「豊かな旨みが口の中で弾けるような、凄いみかんなんです!」
果物バイヤー歴15年、株式会社食文化の赤羽冬彦が熱く語るみかんです。
生産者の岸田和章さんに会いに、大分まで行ってきました。
文・町田成一
うまいもん筆頭目利き人
月刊dancyu元編集長
撮影・八木澤芳彦
岸田和章さんです。
「糖度が高いだけではない、旨みの豊かなみかんをつくりたい」。これが、岸田果樹園の岸田和章さんの雲州みかんです。
岸田和章さんは、昭和42年3月7日生まれ。
東京農大の出身で、その実習先の熊本の柑橘農家さんでその面白さに惹かれ、卒業以来30年余、美味しいみかんづくりを追求してきました。その美味しさのポイントが“旨み”です。
周防灘を臨む果樹園です。
岸田和章さんの岸田果樹園は、大分県の国東半島の北端に近い武田津にあります。
周防灘を臨む、緑豊かな東向きの斜面に果樹園が広がります。
「朝陽を浴びる東向きの、水はけの良い土地は、美味しいみかん栽培のために好条件なんです」と、
岸田さんは語ります。
果肉の旨味が弾けます。
岸田さんの早生みかんは、みかんの内皮が極めて薄い。その中の果肉の一粒一粒が弾けるように充実している。
しかもその果肉がゼリー状とでも言いたいような濃厚な舌ざわりと旨みを持つ。
こんな稀有なみかんです。
「豊かな旨みが口の中で弾けるような、凄いみかんなんです!」。
果物バイヤー歴15年の、株式会社食文化の赤羽冬彦が熱く語るみかんなのです。
2SとSとMサイズだけです。
岸田さんは、収穫量が増えるLやLLサイズには目もくれず、味のいい2SとSとMサイズをつくります。
「みかんは小さくて、表皮のキメが細かい、ブツブツの数が多くて密なものが美味しい」と、岸田さんが教えてくれました。
岸田さんが栽培する雲州みかんの品種は、みかんのシャインマスカットとも言われる人気の「ゆら早生」、極薄の内皮みかん「肥のあけぼの」、薄皮みかんの定番「宮川早生」です。
樹上で完熟させます。
岸田さんは、みかんを樹上に通常よりも3週間から1か月は長くおいて、樹上で完熟させてから収穫します。
「これが岸田さんのみかんの美味しさの大きなポイントです。これをやると落果や鳥の害もあって収穫量が減ります。
しかも木の負担が大きく、翌年に実をつけなくなります。
ですから美味しくなることがわかっていても、一般の農家さんにはできないことなのです。
ところが岸田さんは、翌年も美味しい実を成らせる“剪定”の高度な技術をお持ちなのです」と、赤羽が絶賛します。
剪定の技が美味しくもします。
岸田さんは、「旨みの豊かなみかん栽培は、剪定による木づくりが大切」と、語ります。
「剪定は、毎年果実を成らせるようにすることと、キメの細かい果皮のみかんをつくるためにする仕事です。
木を太らせないようにして、短い芽を出すように枝などを切っていきます。
芽が短いと、果実の成る枝が細くなり、果皮のキメが細かいみかんが成ります。
キメの細かい果皮のみかんは美味しくなりやすいのです」。
アミノ酸と酵母菌を与えます。
「みかんの旨みを増すために、木にアミノ酸だけでなく酵母菌も与えています」と、岸田さんは語ります。
「アミノ酸は、魚粉を主に、おから、黒糖などを混ぜて完熟させたものです。
水に溶かして葉っぱと土に散布します。
酵母菌は、砂糖を酵母で発酵させたもので、これも葉っぱと土に散布します。
酵母は、チーズやお酒づくりなどと同様に、旨みをもたらすのです」
土の表層に細根をつくります。
「根づくりも大切です」と、岸田さんは語ります。
岸田さんの果樹園は、水はけが良くなるように、みかんの木はだんだん畑のような斜面の上に植えられています。
木の下の斜面を見ると細い根が出ているのがわかります。
「木になるべく水分を与えないほうが、みかんは美味しくなります。この土地は安山岩が主体で水はけがよく、土の表層に細根が多くなるように木を育てると、土の表面が乾けば木に水分を与えずにすむわけです」。
細根が多いと、みかんの品質を良くするリン酸を吸収しやすくなるメリットもあるそうです。
収穫後の扱いも大切です。
岸田果樹園では、収穫後すぐに出荷することはせず、コンテナに入れて倉庫で2週間ほどねかせます。
「ねかせることで、ちょっと嫌な酸味がとんで、さらに美味しくなります。
みかんが傷まないように表面の水分を早くとばしたいので、作業効率はよくないですが、浅いコンテナを使っています」と、岸田さんは語ります。
ほかにも、みかんの皮を美しく仕上げるための研磨は、みかんが傷んで味が変わりやすいからと、ブラシの数を3割に減らしてみかんへの負担を軽くするなど、丁寧で優しい扱いには頭が下がります。
出荷は12月が最盛期です。
「12月の出荷時期になりますと、自分のみかんを食べるのが怖くなります。常に100%以上の味を求めてしまうので、万が一98%だったら出荷できなくなってしまいそうだからです」と、岸田さんは真摯に語ります。
右が、果物バイヤー歴15年の赤羽冬彦。左が筆者の町田成一です。
旨いみかんづくりにかける岸田さんの思いと技と自然環境が抜群の岸田果樹園のみかんを、ぜひお楽しみください!
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