厳冬が旬 ふかうら雪人参
雪の掛け布団の下、完熟人参は甘熟人参に変身
完熟が故に割れやすく、かつ、
雪が混じった土から収穫するが故に、手収穫を強いられる。
白神山地の麓の厳しい寒さと適度な積雪が、人参を美味にはするが、
当然のこと、厳寒の畑で雪中収穫が宿命の人参。
しかし、厳寒の畑での仕事を好き好む若者は少ない。
|
50年で人口が半分以下になった深浦町は、
少子高齢化の先頭を走るような町。高齢化率は40%に迫る。
深刻な人手不足が恒常化し、真冬に人参を収穫する人は増えない。
だから、どんなに雪人参が美味しかろうと、
人手を増やせないから、作付けを増やす事はできない。
ふかうら雪人参はとてもうまい!でも、生産量は増えない。
ここに日本の農業の現実がある。
少しでも食べて応援するしか、我々の出来ることはないのだ。
|
ふかうら雪人参は何故うまいのか?
理由その一:雪人参の断面を見るとわかりますが、木部が小さく師部が大きい。
人参の断面の芯の部分が木部で、その周りが師部で、カロテンなどの栄養素を多く含むのは師部です。ふかうら雪人参の甘みやうまみや機能性成分が豊富なのは、この断面をみるだけでもわかります。師部がとても多いのです。
理由その二:栄養素が一般の人参より極めて多い。
試験依頼先:(社)青森県薬剤師会衛生検査センター
試験成績発行年月日:平成21年2月6日
試験成績書発行番号:第20-3072号
甘くて、うまいのは一目瞭然です。
|
理由その三:香りが違う
人参の香りの成分は、β—カリオフェリン・カリオフィレンオキシド(テルペン類)・ボルネオール(テルペン類)
酢酸ボルニル(テルペン類)・トランスαビサボレン(テルペン類)の5種類です。
テルペン類はいわゆる『にんじん臭さ』の元ですが、β—カリオフェリンは香りの良いハーブなどに含まれている成分で、この成分が雪下貯蔵することで、10倍以上に増えることがわかっています。
雪の下で、人参が良い香りを増やし、凍らないように糖度を上げるから、この味と香りが生まれると考えられます。
理由その四:色が違う
品種や季節で多少違いはありますが、オレンジ色の鮮やかな人参はカロテンが豊富です。カロテン(Carotene)の語源はキャロット(Carrot)のオレンジ色です。それだけ鮮やかな橙色をした人参は栄養価が高く、ふかうら雪人参の色を見れば、その良質さがわかります。
人間は味を味覚と嗅覚と視覚の総合分析でとらえます。
ふかうら雪人参は美味しい部分の比率が多く、実際に美味しい成分も多く、香りが良くて、色も美味しそうなので、食べた人を魅了するのです。
|
ふかうら雪人参を作っている人たち 開拓者は漁師だった!
1976年に漁師仲間5人で作ったのが、青森県深浦町の農事組合法人舮作(へなし)興農組合です。代表の坂本正人さんは半農半漁の家に生まれ、中学卒業後に家業の漁師を継いだものの、海難事故で仲間3人を亡くし、漁業に見切りをつけ、農業専業の道を選んだ男です。
白神山地の麓、日本海を望む海抜180m〜200mの高台は青森県の最西端に位置し、日本海からの寒風が吹きすさぶ農業にはむかない土地で、戦前は軍馬の飼葉を集めるくらいしか利用されていなかったそうです。
戦後、県の事業で開墾が進み、いったんは農地になったものの、当初の参入組は撤退し、荒れ放題の土地となっていたのを、坂本さんたちが再度開墾して、漬物用の大根栽培に取り組んだのが始まりです。
• ここに地図を入れると、リアリティがあります。
|
海を愛する男たちは農薬や化学肥料を削減し、土作りでうまい野菜を生む!
舮作興農組合は、「自然の旨さ」にこだわり、農薬と化学肥料の使用を必要最低限の量に抑え、有機質肥料を主体に、緑肥栽培を組み入れた輪作により、自然の力で地力を養っています。
肥料の使用に当たっては、これまでに培ってきた長年の経験とカンに加え、町の土壌検査施設で土壌分析を行い、分析結果に基づいて、足りないものを必要な分だけ加えるという、土と対話しながらの土づくりを行っています。
また、輪作は、人参、大根、馬鈴薯等の根菜類を中心に、緑肥栽培を組み入れることによって、定期的に畑を休ませ、厳選した有機質肥料と緑肥(えん麦)をすき込む丹念な土づくりを行い、自然の力で地力を養っています。
農薬も使用する種類と回数を最小限に抑え、通常この地域で使用する量の半分以下に抑え、平成19年3月には青森県からエコファーマーに認定されています。
山が痩せると海も痩せる。漁師たちには、安易に化学肥料と農薬に頼る農業を歩む事はできなかったのだと思います。
|
増産は難しい・・・
こんな素晴らしい『ふかうら雪人参』は引っ張りだこ。
私も是非、当社分も作って欲しいとお願いしましたが、当社に限らず、新規は全て断っているそうです。
『若者はこんなきつい仕事よりも、介護などの安定した仕事を選ぶから、募集しても全然採用できない。手収穫の人参だから、人手がないと増産できない。』
日本の少子高齢化と労働人口減は、こんな素晴らしい人参の成長限界も作ってしまうのです。なるべく多くの方々に、この人参を知ってもらって、少しでも舮作興農組合の皆さんのお役に立てればと思った、厳寒の雪中取材でした。
自分で搾ったジュースは格別。本当に美味しいので、どくどく飲めてしまいます。
㈱食文化 代表 萩原章史
|